Saturday, October 31, 2015

機械が決定する時代は近い 落語家・桂文珍 『人工知能 人類最悪にして最後の 発明』

lif1510310025-p1

年齢を重ねれば気が長くなるのかと思いきや、余生が短いためか気は短くなる。そして未来がどうなるのか気にかかる。数カ月前、酔っぱらった中年男性 が、ソフトバンクの店員の態度が気にくわないと騒いで、店内にいた人間型ロボットのペッパー君を蹴って壊したと報じられていた。「イラッシャイマセ」とで も言いつつ近づいたか。ペッパー君には何の罪もないけれど。

そのペッパー君、みずほ銀行にも入行し、銀行の受付や接客の業務もこなしているらしい。銀行小話もするという。どんな小話だろう。「落語家のように高座(口座)を大切に」とか言ってるのかな?

近い将来、銀行ではIBMの人工知能「ワトソン」によるコンサルタントロボットも導入されるという。融資を頼みにいってロボットに断られる時代も近いのだろう。人間の行員が言葉を尽くして融資を断るよりも銀行は楽だし、ましてロボット、使い込みもしないだろうし…。

今回の本『人工知能』の著者はドキュメンタリー番組のプロデューサーを長年やってきた経験を生かし、多くの科学者、専門家に取材をしている。いわく「人々の生活を左右する重要な決定はすべて機械か、機械によって知能を強化された人間の手で下されるようになる」。

いつの間にか人はコンピューターにますます依存するようになり、人工知能はコンピューターに命を与え、別物に変えてしまう時代が来るのだとすれば、それは いつ? どのようにして? どのくらいのスピードで? そうした問いに答える本だ。SFの話ではない。人工知能がもたらす未知なる世界を、きめ細かく取材 している。

未来の予測は難しいが、人間を上回る知能を持った人工知能を、人間が理解することはできるのだろうか。でも、少しでも知らなければ。勉強になる一冊だ。(ジェイムズ・バラット著、水谷淳訳/ダイヤモンド社・2000円+税)

 

【プロフィル】桂文珍

かつら・ぶんちん 昭和23年、兵庫県生まれ。桂小文枝に入門。古典、新作ともこなす。著書に『落語的ニッポンのすすめ』ほか。

sankei

No comments:

Post a Comment